長いので回線切って読みましょう。
其の六。 「KAZの仁義なき戦い」(前編)
もう(多分)時効だから書いちゃおうか。
Dポにゃ全く関係ない(事もないかも)が、KAZがちょうど一年半前に体験した「あの事件」を。
一年半ほど前のある晴れた日。YUUはその日保育園の歓迎遠足だった。
YUUは張り切っていた。初めてバスに乗って遠足に行くからである。
KAZも張り切って朝早く起き、YUUの為に下手な弁当(でも冷凍物がないから味はどうあれ愛情はたっぷりだろう)を作って準備した。
しかしエセ主婦のKAZなのでお弁当に意外と時間がかかってしまい、時間ギリギリに家を出ることとなってしまった。
話はちょっとずれるが、KAZは車通勤である。YUUの保育園から自宅までは3kmほどあり、そこから最寄の駅まではさらに3kmあるのだ。自宅から直接最寄駅に行けば徒歩7分なのだが、保育園がちょっとへんぴな所にあるため、KAZはやむなく車通勤を強いられているのであった。
実は、車通勤がご法度なKAZの会社の中では、KAZの車通勤は稀有な存在であったりする。
しかし稀有な存在なだけに、車通勤が許可されるには「免許取得歴が5年以上」とか、「今まで無事故無違反である」とか、「社内の運転格付(我が社では社有車はこの格付がないと乗れないのだ)がC以上」とか、いろいろ条件がある。もちろんKAZは無事故無違反、20歳から免許を持ってて、社有車もばんばん運転している。
そう、実は運転に関しては、社内では信頼されているKAZなのであった。
「この事件」があるまでは。
KAZはYUUの保育園の前まで来て、いつもどおり車を停めようとした。後ろを見ながら、ちょっとバックして、端に寄せようとした時……
改造車にありがちの下品なホーンがけたたましく鳴った。
驚いてKAZが左側を見ると、シルバーのアリストの右前フェンダー部分がKAZの軽四の左前輪のタイヤホールに突っ込んでるのが見えた。
しまった!! 当てたか??
しかし、当たった感触は全くない。ちょっとした接触でも車というものは結構衝撃が来る。慌てて車から降りて見てみると、KAZの軽四の左前タイヤホールにアリストが少し突っ込んでいるだけで、かろうじて、何ミリの世界ではあったが、当たってなかったのだ。
ほっとしたのもつかの間。
「こらオバハン、よくも俺の車に当てよったな!この車は高いんじゃ、ちゃんと弁償してもらうで!!」
ど汚い関西弁でいきなり怒鳴りつけられた。見ればアリストの運転席には40歳くらいの男が乗っている。
「はよどかさんか、コラァ!」
彼に罵声を浴びせられつつも結構冷静だったKAZは言い返した。
「私の車を動かしたらよけいに傷が入りますよ。お宅が下がるべきです」
そういって自分の車に戻り、素早く相手の車のプレートナンバーをメモった。ガソリンのチェックをする為に、ボールペンはいつもサンバイザーに挿してあるのだ。そして時計を見て時間をチェック。そしてPHSに「110」を打ち込み、あとは発信するだけにしておいた。
そうこうするうちに相手が車を下げて、こっちに近付いてきた。怒り心頭の表情であった。
「おいオバハン、分かっとるんやろうなあ」
首には成金丸出しの太い金ネックレス、茶髪にパンチ入ったパーマ。いかにもな柄シャツに白スーツ。
誰が見ても、絵に描いたようなチンピラ(ヤクザまでいってない)であった。
YUUは男の剣幕に完全にビビってしまい、後ろのチャイルドシートに座ったまま泣いている。
「え、なにが」
とりあえずすっとぼけてみた。
今の時間帯はこの道は結構人通りが多い。しかも保育園の前だ。何かあってもすぐに助けは呼べる。しかも左手には110番をセットされたPHS。安心だ。ただ一つ心配なのは泣いているYUUだけである。
「とぼけんなコラァ!!お前が当てよったんやないか、擦れとるぞ!ちゃんと塗装代と慰謝料払ってもらうからな、分かったか!」
「冗談でしょう。当たってもないのに何を」
「ええからごめんなさい言えコラァ!!」
ここで知り合いの保護者のお母さんが割って入りYUUを保育園に連れて行ってくれた。
ハンデがなくなった。
これで思う存分戦えるってもんだ。
「では車の傷を見てみましょう」
KAZは自分の軽四から下り、相手のアリストの右前フェンダーを見た。傷がついていないどころか、細かい埃を拭いたような「払拭痕」もない。軽くでも当たったら、この「払拭痕」は必ず残る。しかも当たったばかりで天気は晴れ、相手もKAZも車に触ってないのだ。
「当たった跡どころか、埃までそのまんまやね。当たってないですよ」
「言いがかり付けるんかコラア!!何でもいいから『私が悪かった、ごめんなさい』って言えや!!」
「当たってないのに言えないですよ。それに、お宅のほうは一時停止の標識あるじゃないですか。止まらずに出てきたからこんな事になったんでしょう。だから私は悪くないです」
「んだと〜!!なんやこのババア!!」
ここで当時の状況を図にしたので見てみましょう。
ざっとこんな感じである。KAZに過失割合が少ないのが分かっていただけただろうと思う。
そして、奴はしきりに「謝れ」と言ってくる。謝ったら最後、きっと法外な修理料をとられるのは目に見えている。
それにKAZはまだ20代だ。どう見積もっても40過ぎている奴に、『オバハン』だの『ババア』だの言われるのはムカツクのだ。はっきり言って、奴の発言はKAZの怒りの経絡秘孔にジャストミートなのだ。
KAZは絶対に謝らない事に決めた。
「あの、ここで揉めてても良くないですから、警察まで行くか、パトカーに来てもらいましょう。私も一応社会的な立場がありますから、こういう事はきちんとしなきゃいけないですし。いくら言われても今私は現金を持ってないですし、きちんと白黒つけたあと、どうするか警察と保険会社に決めてもらいましょうよ。弁償とかうんぬんはその後です」
そしてここでKAZは左手に隠し持っていた東芝DL-M10(メガキャロッツ)を取り出し、110番しようとしたら……
「ちょっと待てあんた、なにしよるんや。先に話しようや」
奴はうろたえて私のメガキャロを奪い取ろうとしてきた。仕方ないのでそのままポケットにメガキャロをしまった。ここで大事なメガキャロが壊されたらたまらない!!(この頃はまだ新品に近かったのだ)
ああ、やっぱり私はDポユーザーの鑑ね!!(ちょっと違う)
ちょっと長くなりそうなので、続きは次回の更新にて。
2002/09/ up