長いので回線切って読みましょう。
其の四。「ヤブなのか、名医なのか」
先日、YUU(4歳、王子)のおち●ち●の茎(変な話題ではないです、念の為)が、赤く腫れて痛い、と言うので病院に連れて行くことになった。
いつも行く小児科に行こうかと思ったが、何せ男の人の一番大事な部分である。いつもの小児科は気さくな先生がきちんと見てくれて評判もまあまあ、前にYUUが通っていた保育園の園医でもありYUUも先生が大好きで信頼しているが、何せ小児科だからきっとソノ部分にはうとかろう……と考え、泌尿器科に行く事にした。
さて母親のKAZには泌尿器科の知識は無い。職場から帰ってきてすぐだったので、近所の人に聞く暇も無い。仕方なく、タウンページをめくった。
「ん〜夜もやってる近所の泌尿器科って少ないな〜」
とか見ていたら、YUUが「痛いよう」とぐずりだした。
一刻の猶予が無いと見たKAZは、とりあえずタウンページに広告が載っていた我が家に一番近い
「I医院」
に場所確認がてら電話を掛けてみる事にした。
「はいI医院です」
電話に出たのは50〜60歳くらいの女の人だった。
KAZ「今から診察お願いしたいのですが」
受付「十字式ですか?」
KAZ「は??」
……ここで「怪しい」と気付くべきだったが、この時点ではYUUの方が気になっており聞き流してしまった、一生の不覚と言わざるを得ないが……。
KAZ「泌尿器科も診察に入ってますよね」
受付「ご紹介ですか?」
何か変な事を聞く人だな〜と思いつつも「タウンページで見つけまして」と素直に告げ、場所を聞き、すぐに車で出発した。YUUはやはり痛がっている。一刻の猶予も無い。もう夜7時を回っている。
教えられた場所に付くと医院が確かにあった。建物はちょっと古いが、自宅と診療所が一緒になっている、別に普通の町医者という感じである。
「さ、YUU、中に入るで」
そういって中に入ろうとした時「十字式健康法、何でも治ります」の看板が医院の入り口の前に鎮座しているのを発見!!本当にさりげなく置いてあったので、気付くのが遅れてしまったのだ。
看板の内容を見ると「気の力で病気が治る」とか「あなたの気力をアップ」とか書いてあり、なんだか病院の看板というよりは新興宗教の看板のようである。
さっき電話で言っていた「十字式」ってこれか……何なんや一体。かなりの不安がよぎるものの受付時間もギリギリの為中に入った。
受付は普通の医院と変わりない雰囲気である。先ほど電話に出たと思われる女性が座っていたので保険証を出してソファに座る。
――――ん、ソファ??
良く考えたら普通の医院で革張りのふかふかなソファってあんまり無いなあ〜、ただの待合室なのに金掛かってるな〜とか思いつつ周囲を見渡す。
【院長・医学博士○◎○◎(名前)】や、【大阪府医師会会員】のプレートを見つけ、ちょっと安心した矢先の事。
「十字式健康法・気力を高める深層水」
とか書かれている2リットルペットボトルの見本を発見!!
さらに不安が増していくKAZ。でももう帰れない。
そして不安と戦いながら待っていると、診察室の中から
「エイッ!!エイッ!!エイッ!!エイッ!!エイッ!!エイッ!!」
と、やたら気合の入った声が聞こえてきた!!YUUは完璧にビビって固まっている(YUUは男の子だがかなりの怖がり)。
「帰ろうよ〜帰ろうよ〜お母さん〜〜!YUU君もう痛ないから帰りたいよ〜」
半泣きで訴えるYUUをたしなめ、診察の順番を仕方なく待つKAZとYUU。
やっと気合の入った声が消えたと思ったら、今度は
「わっはっはっは」
と患者らしき人との大笑いが聞こえてきた。
楽しげに大声で談笑しているが、よくよく耳を傾けてみると……
患者(男性、中年風の声)「先生の気は今日もええ感じでしたな〜、すっかり痛みが取れました」
医者「あ、そう??いや〜○○さん(患者さんの名前らしい)も最近は気が入りやすくなったからこれからはもっと効果が出るで」
患者「そうでっか、わはははは」(以下略)
――――――本当にここは病院なの??
とか不安が限界に達した時、YUUの名前が呼ばれたので腹を決め、嫌がるYUUを抱えて診察室に入った。
普通とは言い難い……感じの診察室で、筆字で大きく書かれた「十字式・気で何でも治ります」とか「明鏡止水」(ちょっと忘れたがそういう感じの四文字熟語)が額縁に入れてあちこちに飾ってある。
小柄な40代前半の白衣を着た先生が、やたら立派な背もたれの付いた革張りの社長椅子に座っていた。
そして
先生(らしき人)「今日はどうされましたか?」
KAZ「実はこの子の……」
先生「診てみましょう」
YUUはまだ子供でいわゆる包○で、今回腫れた原因は、中にきっとカス(何か嫌だな〜こういう事書くの)が溜まって腫れたのだろうと言うことは分かりきっている。
で、何故わざわざ泌尿器科に行ったか、それは切開して包○を治してもらう為もあったのだ。
しかし先生はちょっとYUUのその部分を見てマキロン(家庭にも置いてある消毒液)をかけただけで治療を終了し、
「もう大丈夫でしょう」
と言ったのだった。私は当然不信満開である。
「え〜と、切開とかは……」
「あーいりませんそんなの。薬出しときますので、薬飲んで腫れがひかなかったら、来週また来てください」
そして先生は「医薬辞典」らしきものを私の前でぺらぺらとめくり、薬の名前を調べ始めた!!
おいおい本当に大丈夫かよこの医者は!!!
医者「ん〜この薬は錠剤か〜子供には無理だな……こっちは今置いてないし……」
普通そんな事患者の前で言うか?!
あ、これがええな、とか独り言の末薬が決定したらしく、YUUの体重を聞かれて診察室を後にした。
薬や計算が終わるまでまた待合室で待ったのだが、先生が大声で
「シンジー!!(たぶん先生の子供の名前だろう)。はよ風呂は入れよ、俺が入れんやんか!!」
とか聞こえてきたが、もうこれくらいでは驚かないKAZ。でもYUUはまだびくついている。
そのときだ、受付に呼ばれて行ってみると、さっきの受付の人から
「子供さんの体重は何キロですか?」
とさっき先生に聞かれた事をまた聞かれた。
「16キロです」
と答えてまた座って待ってると、今度は受付の中から受付の女性と看護婦らしき女性の会話が聞こえてきた。
受付「これ薬の量間違ってるんとちゃう??」
看護婦「先生も久々で間違えはったんやろ」
受付「これどうする??」
看護婦「子供やし半分にしといたら大丈夫やで」
………か、帰ってもいいですか?
この会話だけでもう十分ネタになります、はい。
そして。
薬をもらって帰宅する途中でポツリとYUUが呟いた……。
「お母さん……いつもの病院でよかったんとちゃうん……」
「そうやね……」
勿論薬は飲まず、翌日いつもの病院に行ったKAZとYUUでありました。
今回の教訓:
タウンページに載っているからと言って信用できない情報もある。
後日談。
「腫れがひかなかったらまた来てくれ」と言われたものの行く気は勿論無かったが、よくよく考えたらネタの為もう一回行っても良かったかもしれないと今ごろになって思っているKAZでありました。YUUには悪いけどね……。
次回行く時はデジカメで隠し撮りでもしようかしら(笑)。
2002/03/31up